第23回短編小説の集い「のべらっくす」に参加しました
少し変則的な「300字ss」という形式で書きました。よろしくお願いします。
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ご覧くださいまして、ありがとうございます!
参加作品
お題「虫」で書きました。(300字)
虫男
台風一過の九月初め、マンホール付近の水たまりを猫が突いていた。見れば、ムカデがひっくり返されている。ムカデの尾には、まだ脱ぎかけの皮が貼りついていた。赤い首輪をした近所の虎猫である。わざわざ獲物をとる要はない。俺はムカデの胴を掴んで道の端へ投げた。皮を引きずりながら逃げていく姿が痛々しい。
その晩、居酒屋で相席になった女が泊めてくれと言う。そのまま部屋に居ついてしまった。
翌月の早朝、ドアノブを握った俺は女の悲鳴にふり返る。女は殺虫剤の缶を掴んで薬剤を噴霧していた。傍へきた俺に部屋の一角を指さす。ムカデが一匹、畳の縁で痙攣している。
俺は気落ちした面持ちでムカデと女の顔を眺めるばかりである。(了)
※鶴女房をモチーフに書きました。