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ドーナツの穴

twnovelを元に書いた小文を折本にしたり、EPUBにしたりします。うろ覚えな話もします。

映画「エリジウム」感想

内容詳細


映画『エリジウム』第1弾予告編 - YouTube

第9地区』で南アフリカを舞台にエビ型エイリアンと人類の戦いを描いた、ニール・ブロンカンプ監督が、マット・デイモンを主演に迎えて描くSFアクショ ン。富裕層はスペース・コロニーに、貧困層は地球に住む近未来を舞台に、余命5日を宣告された男が、治療のため、*1命の危険にさらされながら 戦いに挑む姿を映し出す。(Movie Walker)

movie.walkerplus.com

ネタバレなし感想

「第9地区」で話題を呼んだニール・ブロムカンプ監督のハリウッド大作です。

主人公、マックスを演じるマット・デイモンを筆頭にジョディ・フォスター、ウィリアム・フィクナーといった有名俳優が出演しています。

CGが素晴らしく、まったく違和感がありません。アメリカの得意分野とはいえ、圧倒される出来栄えです。また、技術に裏打ちされた戦闘シーンのカッコよさ、容赦のなさは、それだけでも十分、価値があります。

前作の「第9地区」と同じく社会問題がテーマですが、娯楽性に富んでいるため純粋にエンターテイメントとして楽しめる作品です。

ネタバレあり感想

以下、映画をご覧になっていれば、言わずもがなの話を長々と語っております。
今回、本当に長いです。また、新味は微塵もありません。申し訳ない。

概論

この映画は、医療保険制度改革にまつわる紛糾が描かれているのだと思います。それと同時に、主人公が自らのトラブルに奔走するうち、解決策を探しあぐね、社会のあり方が間違っているのではないかと気づいていく過程でもあります。

まず、驚くのはマンガ的ガジェット、人物像の洪水です。そちらだけに注目してしまうと資金の潤沢なB級作品と評価されるのも当然でしょう。しかし、それらは、テーマを平易に語るため、作品全体をエンターテイメントに落とし込むために用意された舞台装置なのです。

「ジョンQ」のような社会派のドラマに仕立てることも可能でしょうが、ブロムカンプは、あえてエンターテイメントを選んだのではないかと思います。理由は彼の持ち味を生かすためと、おそらくシリアスな表現を好まない層を含めた多くの人に訴えかけるためと考えられます。

詳論

では、本編に入ります。ストーリーを追いながら、私見を書き連ねたいと思います。

映画の世界は、スラム街であり労働者の住む地球と資産階級の住居、スペースコロニーエリジウム」に二極分化しています。

主人公のマックスは不幸な事故に遭い、余命五日と宣告されます。延命の道はエリジウムにある医療ポッドに入る他ありません。しかし、エリジウムの支配層は渡航を厳しく制限し、高度医療の恩恵から地球の人々を遠ざけていました。

マックスはやむなく、ギャング時代の知己、反政府主義者のスパイダーにエリジウムへの密航を依頼しました。その代償として人体改造を受け、要人の頭脳から直接、情報を抜き取るという犯罪行為に及びます。しかし、作戦は失敗し、マックスは防衛省の傭兵、クルーガーに追われる身となります。

逃亡の混乱の中、マックスは幼馴染のフレイと、その娘マチルダに邂逅します。マチルダは白血病を患っており、地球の医療では彼女を治療できません。一緒にエリジウムへ連れて行ってくれとフレイに懇願されますが、マックスは拒みます。

この場面でマチルダの口から、この映画における「新エロイーズ」に相当する物語が語られるのです。それは、こんな寓話でした。

『むかしむかし、森にミーアキャットが住んでいた。
 体がとても小さいため他の動物に押し退けられ、食物を口にできない。
 飢えていたミーアキャットを救ったのはカバだった。
 カバはミーアキャットを背に乗せ、果物がとれるよう手伝ってくれた。
 ミーアキャットは飢えから解放され、幸せになった』

どうしてカバはミーアキャットを乗せてくれたのか。この疑問にマチルダは、『友達になったからだ』と答えます。

寓話の形を借りた社会福祉の理念の提示です。ルソーが通俗小説の中で平等を説いたようにブロムカンプはエンターテイメントを通じて社会のあり方を問いかけています。だからこそ、リベラル派の有名俳優たちが出演しているのだと思います。

その後、行われるクルーガーとマックスの戦いも象徴的です。

彼らは、同じく地球に生まれ、劣悪な環境下で育ち、犯罪に手を染めています。二人の望みは実際、それほど違っていません。

クルーガーは「王になる」(革命)と言います。しかし、リーダーがすげ変わっただけでは根本的な解決は見込めません。では、どうするのか。マックスの答えは「エリジウムの管理システムをリブートする」です。

これは、地球の人々が医療ポッドを利用する条件を満たす存在『市民』となることを意味しています。

マックスは自らの命を賭してリブートを行い、すべての人々が市民となります。

このラストは、現代社会を管理するシステム、法律が改正され、国民皆保険制度が成立する場面を表しているのだと思います。

 

こうしてまとめてみると、ブログに残すまでもないような事柄ばかりです。しかし、監督の最新作「チャッピー」を鑑賞する前に自分の所感を整理しておきたいと考えました。

生きている作家を使って、こんな文句を謳うのは不謹慎ですが、二十一世紀のジョージ・ミラー、ブロムカンプの映画が楽しみでなりません。


映画『チャッピー』予告編 - YouTube

余談

出演俳優などについて書きます。

クルーガー

エンターテイメントでは、魅力的な悪役を構築できるかどうかが作品の成否を分ける大きな課題となります。その点、クルーガーは大合格だったと思います。

彼は、冷酷、残忍でありながら、トリックスター的な剽軽さも持ち合わせています。

演じているのは「第9地区」の主役だったシャールト・コプリーです。前作とは異なり、筋骨隆々の役柄です。前から、あんな感じだったかもしれませんが、ちょっと面喰いました。

主な武器は刀、手裏剣も扱い、ニンジャスレイヤーを思わせる活躍をします。また、脊椎直結型の改造スーツの進化版、脱着可能なスーツで人体強化を行うことも可能です。

最高にカッコ良かった。

デラコート長官

ジョディ・フォスターという女優は自分がどう見られているか本当によく知っているなと思います。自ら監督した「イノセント・ボーイズ」では冷酷なシスターを演じていました。ロマン・ポランスキーの「おとなのけんか」でも鼻持ちならないインテリ女です。

今作のデラコートは、サッチャーを彷彿とさせるようなタカ派の女性官僚です。現場のクルーガーとは相克をなす悪役の一人でした。

周囲に侍っていた女性の側近たちもデラコートの冷たい硬質なイメージを補強していて良かったと思います。

おっかないオバちゃん役。最高に似合ってました。

マックス

前科はありますが、マックスは非常に凡庸な男です。政治に何の関心もなかった男がトラブルに巻き込まれ、社会を見つめ直す。物語のけん引役として適任だったと思います。

演じるマット・デイモンは説明するまでもないハリウッド・スターの一人です。一番に浮かぶのは「ボーン・アイデンティティ」でしょうか。アクション作品の他、イーストウッドの「インビクタス」など様々なジャンルで活躍しています。

一見するとイケメンではないのですが、全体の佇まいが好きな俳優です。

きみの雄姿は忘れない。

終わりに

ヒロイン、フレイ役を演じたアリシー・ブラガも容姿が最高に好みでした。もっと前面で活躍している映画の時に取り上げられたらと思います。

*1:原文では「永遠の命を手に入れるべく」となっていますが、実情に合わないと考え、「治療のため」と置き換えています。

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