ドーナツに穴

ドーナツの穴

twnovelを元に書いた小文を折本にしたり、EPUBにしたりします。うろ覚えな話もします。

電子書籍「モザイク ショートショートアンソロジー」の感想を書きました

アンソロジー詳細

▼「モザイク ショートショートアンソロジー」
 42編のショートショートが収録されています。

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▼こちらで試し読みできます。


モザイク ショートショートアンソロジー | ショートショートアンソロジー電子書籍化計画

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作品感想

▼では、感想です。予断、独断、ネタバレ、まったく見当外れなものも多いかと思いますが、よろしくお願いします。(以降敬称略)

▼各作品の感想へ飛べます。

  1. 表紙イラスト(偽尾白)
  2. うちの妖怪(田中せいや)
  3. てのひらの光(青海玻洞 瑠鯉)
  4. 吐き気(るうね)
  5. ロボットは製作者の夢を見るか?(SPICE5)
  6. 神様はじめました(飴)
  7. スイカ(⑥郎)
  8. 龍と人(爪楊枝)
  9. ショート(唯野誠一)
  10. Happy Birthday!(清野 志信)
  11. 氷菓子の夢(かずラ)
  12. ……イジョウ文字(くにさき たすく)
  13. ふたり(ooda)
  14. 化けて馬鹿して(江ノ藤 真羽)
  15. 易牙のスープ(リンメイ) 
  16. 優秀な庭師(城田寺 皓)
  17. 銀河鉄道と夜(すずひめ)
  18. 誠意(たそがれイリー)
  19. 寿道(清水 孝俊)
  20. かわいそうな怪獣の話(むらさきあおい)
  21. 月(ぱぴこ)
  22. 疑惑(ておまさお)
  23. 方法(域外)
  24. ビッツ(ドーナツ)
  25. ショパン(楠樹 暖)
  26. 遠出(熊猫二郎笹助)
  27. キューピットになれるか(ほわみ)
  28. 起承転転(ゼニゴン)
  29. 楽園(ザード@)
  30. リセットボタン(ほみち)
  31. 悪魔のふりをした天使(みそっかす)
  32. 瞳の中の流星群(椿 紀夫)
  33. シーラカンス(ラジコ)
  34. 月天使(でんでろ3)
  35. あなたには、あげない(kakua)

表紙イラスト(偽尾白)

少女が珠玉を陽にかざしている構図が素敵ですね。値打ちを測っているようにも見えます。少女は読者の象徴、珠玉は42編の作品群を指しているのでしょうか。

うちの妖怪(田中せいや)

ファンタジーとリアルが上手く融合した作品だと思います。
ユーモラスでありながら現実が垣間見える。読む側の経験や感情を引き出される面白さを感じました。

てのひらの光(青海玻洞 瑠鯉)

私小説または、私小説の形式を用いた小説ではないかと考えました。
高価な宝石ではなく、己の意に適った「小さな光」を求める力強さが感じられ、背中を押してもらったような快さを覚えました。

吐き気(るうね)

「死」を感じます。断末魔の走馬灯のような作品です。
心象を描くにはリアル寄りの部分をしっかり築き上げないと映えないと改めて思い知らされました。

ロボットは製作者の夢を見るか?(SPICE5)

主人公は非常に孤独な人物ではないかと感じました。
ロボットが人間らしい何がしかを獲得するより、むしろ製作者である主人公が心の平穏を得られるといいと思いました。

神様はじめました(飴)

アメリカンジョークの流れを思わせる軽快な作品です。
繰り返しが効果的に使われ、コントのような味わいもあります。神様は意外と寂しがり屋なんだなと思いました。

スイカ(⑥郎)

凡庸ながら幸せなサラリーマンの日常が抒情的に綴られています。
表題のスイカは「夏」「盆」「赤」「甘さ」などを包含する面白いモチーフだなと思いました。

龍と人(爪楊枝)

発掘された石板に刻まれていた叙事詩の一篇のような作品です。
善悪だけでは物事は収まらず、二面性を持っているということでしょうか。事件にまつわる様々な側面がそれぞれ面白いと思いました。

ショート(唯野誠一)

非常に高度な知性と感情を持つロボットを作り出すようになった人類は、どんな存在なのでしょうか。ストーリーは物悲しく、母親、子供が主体的で家庭に居場所のない父親を彷彿とさせます。

Happy Birthday!(清野 志信)

楽しい風景が軽快な会話で描かれています。
秘密基地で遊ぶ小学生のような男性三人(?)の幾分ホモソーシャルな関係が面白いと思いました。

氷菓子の夢(かずラ)

物を作る、売る、買うということの本質に立ち返らせてくれる作品です。
夢にも絶対量があり、いつかは変質し擦り減っていくものなのかもしれません。その喪失に悲しむこともできない心の安寧に空恐ろしくなります。

……イジョウ文字(くにさき たすく)

文字を使った創作物ならではの仕掛けだと思います。
逃亡の原因は博士、助手二人の辛辣さにあるのではと思わせる会話がユーモラスで楽しいです。

ふたり(ooda)

二人だけの秘密の会話を立ち聞きしてしまったような読後感でした。
過去の悲しい出来事、オカルティックな現象をバックボーンに現在の二人の雰囲気が伝わってくる温かい作品です。

化けて馬鹿して(江ノ藤 真羽)

三匹の異形の珍妙な就職活動が描かれています。
本当に求めているものを知った彼らは、実質的に変わらない生活ながら、以前より楽しんいるのではないでしょうか。

易牙のスープ(リンメイ)

美しい女主人と客の不穏な空気、二人の人間関係が食事の風景の中で解き明かされます。プラスの方向に演出されることが多いだろう食事の暗部が引き出されています。様々な面を持つ面白い舞台なのだなと改めて思いました。

優秀な庭師(城田寺 皓)

庭師の悪意のない様子が恐ろしいですね。
おそらく職人気質で完璧な仕事を行ったのでしょうが、依頼人の夫をも剪定してしまった気がします。

銀河鉄道と夜(すずひめ)

幻想的な風景の中を聖書の母子像のような親子が彷徨います。
未来は薄暗く不安を煽るのですが、彼女が己の決断を悲しむことはあっても悔やまなければいいと思いました。

誠意(たそがれイリー)

時事ネタでしょうか。
こういった事態が頻繁にあるのではないかと思わせる教授の様子に可笑しみを誘います。先生という職業は苦労が絶えないのかもしれません。

寿道(清水 孝俊)

長命に拘泥するあまり、人生を無為に費やしてしまう。滑稽な武道の説明に引き込まれます。つまらない事柄を後生大事に抱え、本当の大事を見失わないよう気を付けたいものです。

かわいそうな怪獣の話(むらさきあおい)

思いやりのない態度は他者を遠ざけるということでしょうか。
物語上は野暮だと思いますが、抗議、警告をするなどもう少し歩み寄りがあったらなと考えました。ディスコミュニケーションは恐ろしいですね。

月(ぱぴこ)

透視図の見えにくい複雑な話です。二人の関係は夫婦か付き合いの長い恋人同士として考えました。女性が月から寂寞を感じ取っていること、男性が彼女を月と同列にしていることから最後の一行は別離の示唆なのでしょうか。

疑惑(ておまさお)

シチュエーションコメディを思わせる洒落た作風です。
こういった場合、浮気になるのでしょうか。頭の中での想像は無罪だと思いますが、特殊な物品が存在する状況は悩ましいですね。

方法(域外)

窃盗団の実行した珍妙な作戦、坂の多いサンフランシスコの街並みが似合いそうです。
犯罪映画の一場面のように犯人たちの快哉や警察が地団駄踏んでいる様子が浮かんできます。

ビッツ(ドーナツ)

拙作になります。
問題児が更生施設へ通うという内容です。どことも知れないニセ米国の雰囲気を楽しんでいただけたら幸いです。

ショパン(楠樹 暖)

言葉遊びが楽しい作品です。
短い中にも妹の苦労や姉妹の力関係が伺えます。姉にも何か事情があるのでは等々と空想の余地がありますね。

遠出(熊猫二郎笹助)

パートナーを失った男性二人の関係性が克明に描かれています。
全体が寂寥感に支配され、そのまま彼岸へと進んでいく葬列を思わせます。二人の行き着く先はどこなのだろうと考えてしまいます。

キューピットになれるか(ほわみ)

微笑ましい見合いの風景が活写されています。
ブログを思わせるような素直な文体が、平凡でありながら当事者にとっては大切な一場面をより引き立てていると感じました。

起承転転(ゼニゴン)

ヒッチコックのドラマのような前置きから独特なリズムで話が展開されます。
現実が薄れていくさまが痛快でコミカルだと思いました。夫には、まだまだ余罪がありそうですね。

楽園(ザード@)

誰かのために扉が開かれた途端、彼女の手を取り、ピエロに向かって猛ダッシュというのはどうでしょうか。冗談はさておき、この楽園に迎えられてもあまり楽しいことはないような気がします。帰宅するのが正解かなと思いました。

リセットボタン(ほみち)

「な」の汎用性に驚きました。
現実が小説のように文字で支配されていたらと考えると恐ろしいですね。しりとりが苦手なので、あちらの世界に行ってみたいような気もします。

悪魔のふりをした天使(みそっかす)

さまざまな寓話の場面が浮かんでくる不思議な作品です。
天使や悪魔というのは神から見れば、たいした違いのない存在なのかもしれません。人間の側の主導権が非常に強い点が印象的でした。

瞳の中の流星群(椿 紀夫)

視覚的な効果が重視された作品だなと思いました。
見る間に引き込まれ、主人公の妻の瞳を覗き込んでいるような錯覚に襲われます。美しい情景が描かれていますが、幻想的というのとも違い、とても不可思議な読後感でした。

シーラカンス(ラジコ)

疎遠になった友人の思い出という語り口で物語が展開します。太古から存在している生物に不気味な存在感と懐かしさを覚えました。その正体は、生温い泥へ踏み込んだ者だけが知り得るのかもしれません。

月天使(でんでろ3)

まずタイトルと内容のギャップに驚きました。
八百万とは聞きますが、これほどたくさんの神がいたとしたら、息つく暇もないですね。主人公の言葉に同感です。

あなたには、あげない(kakua)

甘酸っぱい青春の一ページ。十代の女性の心情が的確に描き出されていると思いました。しかし、実際にこういう女性がいたら少し怖いかもしれない。正直なほうが助かります。

《随時、更新の予定》